2008年6月1日日曜日

Ikuko_Harada

クラムボンの原田郁子さんのソロ第2作の「ケモノと魔法」。先日発表されたミニ・アルバム「気配と余韻」収録曲の別テイクが2曲収められています。プロデュースは同じで、エンジニアのZAKと原田さん自身で、おそらく同じレコーディング・セッションの流れで制作されたものでしょう。サウンド・コンセプトも「気配と余韻」の世界観をさらに突き詰めたものになると言ってよく、初回盤はブック形式になっており、原田さん自信の描いたイラストがえがかれています。クラムボンのハイテンションなツアーすべてを出しつくし、抜け殻のようになってしまったという原田さんは、ゆっくりとリハビリを重ね、さながら冬眠から目覚めるがごとくこのアルバムを作ったのでしょう。原田さんのピアノ、ボーカルと、生ギターなど最低限の伴奏楽器だけが鳴ります。全体に流れるトーンは決してにぎやかなものではなく、むしろひんやりとした孤独感がが強く漂っています。空間を生かしたシンプルにして奥行きのある音像は、いかにもZAKさんの仕事らしいと思います。パーティーのあとの静寂と余韻、朝のけだるい空気の中をゆっくりと立ち上るコーヒーの香のような日常感覚。その中心で鳴るのはピアノです。3年前のソロ第一作のタイトルが「ピアノ」で、本作には原マスミさんのカヴァー「ピアノ」が収められています。これらはすでに原田さんのライブでは何度も演奏されている曲で、原田さんはピアノという楽器に思いいれがあるのでしょう。それは、原田さんの音楽家としての出発点は歌ではなく、ピアノにあるからです。マル・ウォルドロンに影響をうけたという原田さんのピアノ・プレイは、ここでは決して声高ではなく、飾り気もありませんがただ深いニュアンスを含んでおり、それは彼女のヴォーカルと完全に見合っています。原田さんの声は、声量がないのでミックスの段階でかなりレベルを上げなければ、喧噪なノイズの中に埋もれてしまうのですが、彼女は無理をせず、自然に歌います。その周囲で鳴るすべてがひっそりとしたつぶやきのような原田さんの声に優しく寄り添っていて、ピアノとのバランスは完璧です。しかし、これはクラムボンでの原田さんがあってこそここで魅力的な存在に写ることを覚えておきたいものです。

1 件のコメント:

Virshla さんのコメント...

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