2008年6月2日月曜日

Yuuko_Andou

1曲しか聴かないと分からないけれど、アルバムで聴くと安藤祐子という人は曲によってくるくると声の印象が変わる人だと気づきます。5月21日に発売したアルバム「Chronicle」でも、「感謝」について歌うピンと張りつめた1曲目からはじけた感じの2曲目に移るときなど、すごいギャップを感じます。本来曲によって声の印象が変わるというのは歌い手にとってはあまりいいことではないはずです。それはつまり自分の声を持っていないことを意味するからです。安藤祐子さんという歌い手のすごいところは、曲によって声の印象が変わることが欠点になるどころか、むしろ彼女の表現者として誠実な姿勢、フェアさのあらわれだと感じられるところです。表現世界の真ん中に自分という存在をおいていない、かといって中心がないのではなく、不安定に揺れながら少しでも確かなものにちかづこうとしている。そんなアート色の強い女性シンガーです。アルバム「chronicle」の曲構成は、1曲目「六月十三日、強い雨」、2曲目「HAPPY」、3曲目「水玉」、4曲目「美しい人」、5曲目「海原の月」、6曲目「お祭り~フェンスと唄おう~」、7曲目「Hilly Hilly Hilly」、8曲目「鐘が鳴って門を抜けたなら」、9曲目「再生」、10曲目「たとえば君に嘘をついた」、11曲目「パラレル」、12曲目「ぼくらが旅に出る理由」、13曲目「さよならと君、ハローと僕」の全13曲です。今までの作品にはない突き抜けたテンションのシングル「パラレル」に顕著なように、歌うことが、自己表現でなく歌を届けるための行為に変わったように思います。独特の子供っぽい歌いまわしはほとんど姿を潜め、それに変わって、生が脈々と息づいている凛とした声が迷いもなく、駆け引きもなく放たれています。歌詞も、「いつも逢いたい」、「君がすき」などシンプルで根源的なフレーズが多く、ストレートな気持ちをストレートに歌うことを知った今作には、遠まわしな愛情表現を取り払ったようなさわやかな楽曲がそろっています。安藤祐子さんの本音というか、純粋な部分にもっともっと吸い込まれていくような一枚です。

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